中華人民共和国 草原法

1985年6月18日第6期全国人民代表大会常務委員会第11回会議採択、2002年12月28日第9期全国人民代表大会常務委員会第31回会議修正)

目次

第一章 総則

第二章 草原の権利所属

第三章 計画

第四章 建設

第五章 利用

第六章 保護

第七章 監督・検査

第八章 法律責任

第九章 附則

第一章 総則

第一条 草原の保護、建設、合理的利用を図り、生態環境を改善し、生物の多様性を保ち、現代畜産業を発展し、経済および社会の持続可能な発展を促進するために、この法律を制定する。

第二条 中華人民共和国領域内において草原の計画、保護、建設、利用および管理活動を行う場合は、この法律を適用する。

この法律において、草原とは、天然の草原と人工の草地を指す。

第三条 国家は草原に対して科学的な計画、全面的な保護、重点的な建設、合理的な利用という方針を実行し、草原の持続可能な利用と生態、経済、社会の調和の取れた発展を促進する。

第四条 各級人民政府は、草原に対する保護、建設および利用の管理を強化しなければならず、草原の保護、建設および利用を国民経済・社会発展計画に組み入れるべきである。

各級人民政府は、草原の保護、建設および合理的な利用に関する広報・啓蒙を強化しなければならない。

第五条 いかなる組織および個人も草原関連法律・法規を遵守し、草原を保護する義務を負い、同時に草原関連法律・法規に違反し、草原を破壊する行為に対して監督、検挙および告訴する権利を有する。

第六条 国家は草原の保護、建設、利用および測定分野の科学研究の展開を奨励・支持し、先進的技術と成果を推進し、科学技術分野の人材を育成する。

第七条 国家は草原の管理、保護、建設、合理的利用および科学研究等の活動において顕著な成績を収めた組織と個人を褒賞する。

第八条 国務院草原行政主管部門は、全国の草原監督・管理業務を主管する。

県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は、本行政区域内の草原監督・管理業務を主管する。

郷(鎮)人民政府は、本行政区域内の草原の保護、建設および利用状況に対する監督・検査を強化しなければならず、必要に応じて専属者もしくは兼職者を配置し、具体的な監督・検査業務の責任を持たせることができる。

第二章 草原の権利所属

第九条 草原は、法律が集団所有に属することを規定する場合を除き、国家の所有に属する。国家が所有する草原は、国務院が国家を代表して所有権を行使する。

いかなる組織もしくは個人も(草原を)占拠、売買またはその他の形式で違法に草原を譲渡してはならない。

第十条 国家が所有する草原は、法により全民所有制の機関、集団経済組織等の使用に与えることを確定できる。

草原を使用する機関は、草原を保護・建設し、および合理的に利用する義務を履行しなければならない。

第十一条 法により全民所有制の機関、集団経済組織等の使用に与えることが確定された国家の所有する草原は、県級以上の人民政府が登記し、使用権証書を給付し、草原の使用権を確認する。

使用権が確定されていない国家の所有する草原は、県級以上の人民政府が登記して一冊にまとめ、かつ保護管理の責任を負う。

集団所有の草原は、県級人民政府が登記し、所有権証書を給付して草原所有権を確認する。

法により草原の権利所属を変更する場合は、草原の権利所属の登記変更手続きを行わなければならない。

第十二条 法により登記された草原の所有権および使用権は法律による保護を受け、いかなる組織もしくは個人もそれを犯してはならない。

第十三条 集団所有の草原もしくは法により集団経済組織の使用に与えることが確定された国家の所有する草原は、本集団経済組織内の家庭または連合世帯が請負経営を行うことができる。

草原の請負期間内において、請負経営者が使用する草原に対して調整を行ってはならない。個別に確かに適切な調整が必要な場合は、当集団経済組織構成員の村(牧)民会議の3分の2以上の構成員もしくは3分の2以上の村(牧)民代表の同意を経なければならず、かつ郷(鎮)人民政府および県級人民政府草原行政主管部門に届け出て認可を受けるべきである。

集団所有の草原もしくは法により集団経済組織の使用に与えることが確定された国家の所有する草原を、当集団経済組織以外の機関または個人が請負経営する場合は、当集団経済組織構成員の村(牧)民会議の3分の2以上の構成員または3分の2以上の村(牧)民代表の同意を経ることとし、かつ郷(鎮)人民政府に届け出て認可を受ける。

第十四条 草原の請負経営について、発注側と請負側は書面契約書を締結しなければならない。草原請負契約書の内容は双方の権利および義務、請負う草原の4方の境界、面積および等級、請負期間および開始と終了日、請負う草原の用途と違約責任等を含まなければならない。請負期間が満了した場合、元の請負経営者は同等の条件下において優先請負権を有する。

草原を請負経営する機関と個人は、草原の保護、建設および請負契約書の定める用途により合理的に利用する義務を負わなければならない。

第十五条 草原の請負経営権は法律の保護を受け、自己意志、有償の原則に基づき、法により譲渡することができる。

草原請負経営権の譲渡の譲受側は、畜産業生産に従事する能力を備えていなければならず、かつ草原の保護、建設および請負契約書の定める用途により合理的に利用する義務を履行しなければならない。

草原の請負経営権の譲渡は、発注側の同意を得なければならない。請負側と譲受側が譲渡契約書中に定める譲渡期限は、元の請負契約書の残余期間を超えてはならない。

第十六条 草原の所有権、使用権についての争議は、当事者が協議して解決しなければならない。協議で合意に至らない場合は、関係する人民政府が処理する。

機関間の争議は、県級以上の人民政府が処理する。個人間、個人と機関の間の争議は、郷(鎮)人民政府または県級以上の人民政府が処理する。

当事者が関係する人民政府の処理決定に不服である場合は、法により人民法院[1]提訴することができる。

草原の権利所属を巡った争議が解決されるまでは、いかなる一方も草原の利用現状を変えてはならず、草原および草原上の施設を破壊してはならない。

第三章 計画

第十七条 国家は草原の保護、建設、利用に対して、統一された計画制度を実行する。国務院草原行政主管部門は国務院の関連部門と共同で全国の草原の保護、建設、利用計画を編成し、国務院に届け出て認可を受けてから実施する。

県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は、同級の関連部門と共同で一級上の草原の保護、建設、利用計画に基づいて本行政区域の草原の保護、建設、利用計画を編成し、同級の人民政府に届け出て認可を受けてから実施する。

認可を受けた草原の保護、建設、利用計画が確かに調整または修正を必要とする場合は、元の認可機関の認可を受けなければならない。

第十八条 草原の保護、建設、利用計画の編成は、国民経済・社会発展計画により、かつ以下の原則を遵守しなければならない。

(一)生態環境を改善し、生物の多様性を保ち、草原の持続可能な利用を促進する。

(二)既存の草原を基礎に、適地適作とし、統一された計画を行い、分類指導を実施する。

(三)保護を主として、建設を強化し、段階別改良し、合理的に利用する。

(四)生態効果、経済効果、社会効果を結合させる。

第十九条 草原の保護、建設、利用計画は、草原の保護、建設、利用の目標と対策、草原機能の区域別区分および各建設の全体的配置、各専門計画等を含まなければならない。

第二十条 草原の保護、建設、利用計画は土地利用の全体計画とリンクするものであり、環境保全計画、土壌維持計画、防砂治砂[2]水資源計画、長期林業計画、都市全体計画、村と町の計画およびその他の関連計画と調和がとれたものでなければならない。

第二十一条 草原の保護、建設、利用計画は認可されると、厳格に執行しなければならない。

第二十二条 国家は草原の調査制度を設ける。

県級以上の人民政府草原行政主管部門は、同級の関連部門と共同で定期的に草原調査を行う。草原の所有者または使用者は調査を支持、協力し、かつ関連の資料を提供しなければならない。

第二十三条 国務院草原行政主管部門は、国務院の関連部門と共同で全国草原等級評定基準を制定する。

県級以上の人民政府草原行政主管部門は、草原の調査結果、草原の質に基づき、草原等級評定基準に従って草原に対して等級評価を行った上で、等級を定める。

第二十四条 国家は草原の統計制度を設ける。

県級以上の人民政府草原行政主管部門と同級の統計部門は共同で草原統計調査方法を制定し、法により草原の面積、等級、採草量、家畜の負荷量等について統計を行い、草原統計資料を定期的に公布する。

草原統計資料は、各級人民政府が草原の保護、建設、利用計画を編成する際の根拠である。

第二十五条 国家は草原の生産、生態観測予警報システムを設ける。

県級以上の人民政府草原行政主管部門は、草原の面積、等級、植生構成、生産能力、自然災害、生物災害等草原の基本状況に対して動的観測を実行し、同級政府および関連部門に動的観測と予警報情報サービスを適時に提供する。

第四章 建設

第二十六条 県級以上の人民政府は草原建設に対する投入を増やし、草原の建設を支持しなければならない。

国家は機関と個人が投資して草原を建設することを奨励し、投資した者が利益を受けるという原則により草原の投資建設者の合法的権益を保護する。

第二十七条 国家は人工草地の建設、天然草原の改良とまぐさ・飼料の基地建設を奨励および支持し、草原の生産能力の安定化を図り、さらにそれを向上させる。

第二十八条 県級以上の人民政府は、農牧民の草原囲い込みの展開、まぐさ飼料の貯蔵、家畜の囲い飼い、牧民定住地点等の生産生活施設の建設を支持、奨励、および指導しなければならない。

県級以上の地方人民政府は、草原における水利施設の建設、草原の節水灌漑の発展、人畜の飲料水条件の改善を支持しなければならない。

第二十九条 県級以上の人民政府は、草原の保護、建設、利用計画に基づき、草種の基地建設を強化しなければならず、優良な草品種の選択・栽培、導入、普及を奨励する。

草の新品種は全国草品種査定委員会の査定を経なければならず、国務院草原行政主管部門が公告して初めて普及させることができる。国外から草品種を導入する場合は、法により審査認可を行わなければならない。

県級以上の人民政府草原行政主管部門は、法により草種の生産、加工、検疫、検査の監督管理を強化し、草種の品質を保証しなければならない。

第三十条 県級以上の人民政府は、火事状況に対する観測、防火物資の備蓄、防火隔離帯等草原の防火施設の建設を計画的に進め、防火の需要を保証しなければならない。

第三十一条 退化、砂漠化、アルカリ化、石漠化[3]および土壌流失が進む草原に対して、地方の各級人民政府は草原の保護、建設、利用計画に基づき、整備区域を確定し、特別な整備を行わなければならない。

大規模な草原総合整備は、国家の国土整備計画に組み入れることとする。

第三十二条 県級以上の人民政府は草原の保護、建設、利用計画に基づき、同級の国民経済・社会発展計画において、草原の改良、人工植草、草種の生産に資金を割り当てる内容を盛り込まなければならない。いかなる組織もしくは個人も途中で留め、流用してはならない。県級以上の人民政府財政部門と監査部門は、監督管理を強化しなければならない。

第五章 利用

第三十三条 草原の請負経営者は草原を合理的に利用しなければならず、草原行政主管部門の査定する家畜負荷量を超えてはならない。草原の請負経営者は、まぐさ・飼料の栽培・貯蔵、まぐさ・飼料の供給量の増加、家畜の調節・処理、家畜構造の最適化、家畜の出荷率の向上等の措置を採り、草と家畜のバランス維持を図らなければならない。

草原の家畜負荷量基準および草と家畜のバランスが取れた管理方法は、国務院草原行政主管部門が規定する。

第三十四条 牧畜区の草原請負経営者は区域を区分しローテーション放牧を実行し、家畜構造を合理的に配置し、バランスの取れた草原利用を図らなければならない。

第三十五条 国家は、農業区、半農半牧区および条件が備った牧畜区で家畜の囲い飼いを実行することを奨励する。草原の請負経営者は、飼育家畜の種類と数により、まぐさ・飼料を調整、貯蔵し、牧草のサイロ貯蔵およびまぐさ・飼料の加工等の新技術を採用して、天然草地に依頼して放牧するという生産方式を徐々に転換させなければならない。

草原の放牧禁止区、牧畜休止区、ローテーション放牧区においては、国家は畜舎を利用した囲い飼いに対して食糧と資金の補助を行う。具体的な方法は、国務院または国務院に授権された関連部門が規定する。

第三十六条 県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は、草刈場および野生の草種基地に対して、合理的な草刈期、採種期および刈り高さと刈り強度を規定して、草刈、採種のローテーションを実行しなければならない。

第三十七条 自然災害等特殊な状況に遭遇し、草原の臨時的調整・使用を行うことが必要な場合は、自己意思と互恵の原則に基づき、双方が協議して解決しなければならない。県を跨いで草原の臨時的調整・使用を行うことが必要となる場合は、関連の県級人民政府または共通の上級人民政府が協議を組織して解決する。

第三十八条 鉱物採掘および工事建設を行う場合は、草原を占拠することなく、または少なめに占拠することとする。草原を確実に収用するまたは使用する必要がある場合は、省級以上の人民政府草原行政主管部門の審査・同意を経た上で、土地管理に関連する法律、行政法規により建設用地の審査・認可手続きを行う。

第三十九条 建設のために集団所有の草原を収用する場合は、『中華人民共和国土地管理法」の規定により補償を与えなければならない。建設のために国家所有の草原を使用する場合は、国務院の関連規定により草原の請負経営者に補償を与えなければならない。

建設のために草原を収用または使用する場合は、草原の植生回復費を納付しなければならない。草原植生回復費の特定用途への使用を徹底し、草原行政主管部門が規定により草原植生の回復に使用することとする。いかなる組織と個人も留め、流用してはならない。草原植生回復費の徴収、使用と管理方法は、国務院価格主管部門と国務院財政部門が国務院草原主管部門と共同で制定する。

第四十条 草原を臨時に占用する必要がある場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門の審査・同意を経なければならない。

草原の臨時的占用期間は2年を超えてはならず、かつ臨時に占用する草原上においては永久的建築物、構築物を建造してはならない。占用期間が満了する場合、土地使用機関は草原の植生を回復し、かつ速やかに返還しなければならない。

第四十一条 草原において草原の保護と畜産業の生産に直接役立つ施設を建造するために、草原を使用する必要がある場合は、県級以上の人民政府草原行政主管部門が認可する。その他の施設を建造し、草原を非牧畜産業の生産用地にする必要がある場合は、法により建設用地審査認可の手続きを行わなければならない。

前項にいう草原の保護と畜産業の生産に役立つ施設とは、以下を指す。

(一)草種とまぐさ・飼料を生産・貯蔵する施設

(二)畜舎、交配地、毛刈り地、薬剤を用いた家畜入浴池、人畜の飲料水施設

(三)科学研究、試験、モデル基地

(四)草原の防火と灌漑施設

第六章 保護

第四十二条 国家は基本草原の保護制度を実行する。次の号に掲げる草原は基本草原に分類され、厳格な管理を実施しなければならない。

(一)重要な放牧場

(二)草刈地

(三)畜産業の生産に用いられる人工草地、退耕還草[4]におよび改良された草地、草種基地

(四)気候の調節、水源の涵養、土壌維持、防風と砂の固定に特別に役立つ草原

(五)国家の重点保護に置かれている野生動植物の生息環境である草原

(六)草原に対する科学研究、教育試験基地

(七)国務院が規定する、基本草原に分類すべきその他の草原

第四十三条 国務院草原行政主管部門または省、自治区、直轄市人民政府は、自然保護区の管理に関する規定により、以下の地区において草原自然保護区を設立することができる。

(一)代表性を有する草原類型

(二)希少で危機に瀕している野生動植物の分布区

(三)重要な生態機能と経済的価値、科学研究の価値を有する草原

第四十四条 県級以上の人民政府は、法により草原の希少で危機に瀕している野生植物と生物種資源の保護、管理を強化しなければならない。

第四十五条 国家は草原に対して採草量により家畜の数を決め、草と家畜のバランス維持という制度を実行する。県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は、国務院草原行政主管部門の制定する草原の家畜負荷基準により、現地の実際状況にあわせ、草原の家畜負荷量を定期的に査定する。各級人民政府は、草原の家畜負荷超過を防止するよう有効な措置を採らなければならない。

第四十六条 草原の開墾を禁止する。土壌流失が深刻で、砂漠化の傾向が見られ、生態環境の改善が必要とされる開墾済みの草原については、退耕還草を計画的、段階的に実施しなければならない。砂漠化、アルカリ化、石漠化が見られている草原に対しては、期限付きで整備しなければならない。

第四十七条 ゆゆしく退化、砂漠化、アルカリ化、石漠化が見られている草原および生態脆弱区の草原に対しては、放牧禁止・放牧休止制度を実行する。

第四十八条 国家は法による退耕還草と放牧禁止、放牧休止の実行を支持する。具体的な方法は、国務院または省、自治区、直轄市人民政府が制定する。

国務院が認可する計画範囲内で退耕還草を実施する農牧民に対しては、国家の規定により食糧現物支給、現金や草種購入費の支出など補助を与える。退耕還草の完成後、県級以上の人民政府草原行政主管部門が照合した上で登記し、法により土地用途の変更手続きを履行して、草原権利所属証書を給付する。

第四十九条 荒漠地、半荒漠地およびゆゆしく退化、砂漠化、アルカリ化、石漠化、土壌流失が見られた草原および生態脆弱区の草原において植物を掘返し、または草原の植生を破壊するその他の活動に従事することを禁止する。 

第五十条 草原において採土、採砂、採石等の作業に従事する場合は、県級人民政府草原行政主管部門に届け出て認可を得なければならない。鉱物資源を採掘する場合は、法により関連手続きを行わなければならない。

認可を経て草原において本条第一項に列記される活動に従事する場合は、規定された時間内、区域内に許可された採掘方法で作業を行い、かつ草原の植生を保護する措置を採らなければならない。

他人の使用する草原において本条第一項に列記される活動に従事する場合は、事前に草原使用者の同意を得なければならない。

第五十一条 草原において牧草または飼料作物を栽培する場合は、草原の保護、建設、利用計画に符合しなければならない。県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は監督管理を強化し、草原の砂漠化と土壌流失を防止しなければならない。

第五十二条 草原において営利目的の旅行活動を展開する場合は、草原の保護、建設、利用計画に符合しなければならず、かつ事前に県級以上の地方人民政府草原行政主管部門の同意を経て初めて関連手続きを行うことができる。

草原において営利目的の旅行活動を展開する場合は、草原の所有者、使用者および請負経営者の合法的権益を侵してはならず、草原の植生を破壊してはならない。

第五十三条 草原の防火業務においては、予防を主とし、防火と消火を結合させるという方針を徹底する。

各級人民政府は、草原防火責任制を打ち立て、草原の防火期間を規定し、草原の防火・消火に備えるための案を制定し、草原火事の予防と消火活動を確実に行う。

第五十四条 県級以上の地方人民政府は草原のネズミによる被害、病虫害および毒草対策のための実施体制を整い、管理活動を行わなければならない。県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は対策をとり、草原のネズミによる被害、病虫害、毒草に対する観測・予警報、調査および防止活動を強化し、総合的な防止方法の研究・普及を行うために実施体制を整備しなければならない。

草原においては、劇毒、残留度の高い、および2次中毒を引き起こす恐れのある農薬を使用することを禁止する。

第五十五条 災害の救済および牧民の移転に使われるオート車両を除き、オート車両が道路を離れて草原上を運転し、草原の植生を破壊することを禁止する。地質調査、科学考察等の活動に従事するために、確かに道路を離れて草原上を運転する必要がある場合は、県級人民政府草原行政主管部門に運転区域と運転路線方案を提出しなければならず、確認された後執行する。

第七章 監督・検査

第五十六条 国務院草原行政主管部門および草原の及ぶ面積が大きい省、自治区の県級以上の地方人民政府草原行政主管部門は草原監督管理機構を設立する。同機構が草原関連法律・法規の執行状況に対する監督検査の責任を負い、草原関連法律・法規に違反した行為を取り締まる。

草原行政主管部門と草原監督管理機構は、法執行部隊の整備を強化し、草原監督検査員の政治素養、業務素質を高めなければならない。草原監督検査員は職務に忠実で、公平に法執行に努めなければならない。

第五十七条 草原監督検査員が監督検査の職務を履行する場合は、以下の措置を採る権利を有する。

(一)検査の対象となる機関または個人に草原の権利所属に関する書類と資料の提出を求め、調査しまたは複製する。

(二)検査の対象となる機関または個人に、草原の権利所属等の問題について説明するよう求める。

(三)違法現場に立ち入り撮影し、録画し、実地調査を行う。

(四)検査の対象となる機関または個人に、草原関連法律・法規に違反する行為を停止し法定の義務を履行するよう命じる。

第五十八条 国務院草原行政主管部門と省、自治区、直轄市人民政府草原行政主管部門は、草原監督検査員向けの訓練と考査を強化しなければならない。

第五十九条 関連機関と個人は草原監督検査員が行う監督検査業務を支持し、協力し、草原監督検査員の法による職務執行を拒否したり阻害したりしてはならない、

草原監督検査員が監督検査職務を履行する際は、検査の対象となる機関と個人に法執行の証明書を示さなければならない。

第六十条 草原関連法律・法規に違反する行為に対して、法により行政処理を行わなければならない。関連草原行政主管部門が行政処理の決定を行わない場合は、上級の草原行政主管部門は関連草原行政主管部門に行政処理の決定を下すよう命ずる、または行政処理の決定を直接に下す権利を有する。

第八章 法律責任

第六十一条 草原行政主管部門の職員およびその他の国家機関の関連職員が職務をおろそかにし、職権を濫用し、法により監督管理の職責を履行しない場合、または違法行為を発見しても取り締まらず、ゆゆしい結果をもたらし、犯罪が成立された場合は、法により刑事責任を追及する。刑事処罰に至らない場合は、法に従って行政処分を科す。

第六十二条 草原の改良、人工植草および草種の生産にかかる資金または草原植生回復費を留め、流用し、犯罪を構成した場合は、法に従って刑事責任を追及する。刑事処罰に至らない場合は、法に従って行政処分を科す。

第六十三条 草原を収用し、使用する権利のない機関または個人が草原を違法に収用し、使用した場合、認可権限を超えて草原の収用、使用を違法に認可した場合、或いは法律の規定する手順に違反して草原を収用、使用して犯罪を構成した場合、法に従って刑事責任を追及する。刑事処罰に至らない場合は、法に従って行政処分を科す。草原の収用、使用を違法に認可した書類は無効とする。収用、使用を違法に認可された草原は回収しなければならず、当事者が返還を拒否した場合は、草原の違法使用として処罰を行う。

草原の収用、使用を違法に認可し、当事者に損失をもたらした場合は、法に従って賠償責任を負う。

第六十四条 売買またはその他の形式で草原を違法に譲渡し、犯罪を構成した場合は、法に従って刑事責任を追及する。刑事処罰に至らない場合は、県級以上の人民政府草原行政主管部門が職権により期限付きでの改善を命じ、違法所得を没収し、かつ違法所得の1倍以上5倍以下の罰金を科す。

第六十五条 認可を経ることなく、もしくは詐欺手段で認可を取得し、草原を違法に使用し、犯罪を構成した場合は、法に従って刑事責任を追及する。刑事処罰に至らない場合は、県級以上の人民政府草原主管部門が職責により違法に使用されている草原の返還を命じ、草原の保護、建設、利用計画に違反して無断で草原を建設用地に変えたものに対しては、期限付きで違法に使用される草原に新築された建造物およびその他の施設を除去し、草原の植生を回復するよう求め、かつ草原の違法使用における前期3年間の平均収穫高の6倍以上12倍以下の罰金を科す。

第六十六条 草原を違法に開墾し、犯罪を構成した場合は、法に従って刑事責任を追及する。刑事責任に至らない場合は、県級以上の人民政府草原主管部門が職責により違法行為の停止を命じ、期限付きで植生を回復するよう求め、違法に取得した財物と違法所得を没収し、かつ違法所得の1倍以上5倍以下の罰金を科す。違法所得がない場合は、5万元以下の罰金を科す。草原の所有者もしくは使用者に損失をもたらした場合は、法に従って賠償責任を負う。

第六十七条 荒漠地、半荒漠地およびゆゆしく退化、砂漠化、アルカリ化、石漠化、土壌流失が見られた草原、および生態脆弱区の草原において、植物を掘出する、または草原の植生を破壊するその他の活動に従事する場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門が職権により違法行為の停止を命じ、違法に取得した財物と違法所得を没収し、かつ違法所得の1倍以上5倍以下の罰金を科すことができる。違法所得がない場合は、5万元以下の罰金を科す。草原の所有者もしくは使用者に損失をもたらした場合は、法に従って賠償責任を負う。

第六十八条 認可を経ることなく、または規定の時間、区域および採掘方式に従わずに草原上で採土、採砂、採石等の活動を行った場合は、県級人民政府草原行政主管部門が違法行為の停止を命じ、期限付きで植生を回復するよう求め、違法に取得した財物および違法所得を没収し、違法所得の1倍以上2倍以下の罰金を科すことができる。違法所得がない場合は、2万元以下の罰金を科すことができる。草原所有者もしくは使用者に損失をもたらした場合は、法に従って賠償責任を負う。

第六十九条 第五十二条の規定に違反し、無断で草原において営利目的の観光活動を展開し、草原の植生を破壊した場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門が職権により違法行為の停止を命じ、期間付きで植生を回復するよう求め、違法に取得した財物および違法所得を没収し、違法所得の1倍以2倍以下の罰金を科すことができる。違法所得がない場合は、草原が破壊される前の3年間の平均収穫高の6倍以上12倍以下の罰金を科すことができる。草原所有者もしくは使用者に損失をもたらした場合は、法に従って賠償責任を負う。

第七十条 災害の救済および牧民の移転以外の目的に使われるオート車両が道路を離れて草原上で運転する、または地質調査、科学考察等の活動に従事するものが確認された運転区域と運転路線によることなく草原上で運転し、草原の植生を破壊した場合は、県級人民政府行政主管部門が違法行為の停止を命じ、期限付きで植生を回復するよう求め、かつ草原が破壊される前の3年間の平均収穫高の3倍以上9倍以下の罰金を科すことができる。草原の所有者もしくは使用者に損失を与えた場合は、法に従って賠償責任を負う。

第七十一条 臨時に占用された草原において永久的建築物、構築物を建造した場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門が職権により期限付きで除去するようを命ずる。期間を過ぎても除去しない場合は、法により強制的に除去し、その必要費用は違法者が負担する。

臨時に草原を占用し、占用期間が満了したものの、土地使用機関が草原の植生を回復しない場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門が職権により期限付きで回復するようを命ずる。期限を過ぎても回復しない場合は、県級以上の地方人民政府草原行政主管部門が代理で回復し、その必要費用は違法者が負担する。

第七十二条 認可を経ることなく、草原の保護、建設、利用計画を無断で変更した場合は、県級以上の人民政府が期限付きで改善するよう命ずる。直接責任を負うべき主管担当者およびその他の直接責任者に対しては、法に従って行政処分を科す。

第七十三条 この法律の草と家畜のバランス維持という制度に関する規定に違反し、家畜の飼育量が県級以上の地方人民政府草原行政主管部門の査定する草原の家畜負荷量基準を超えた場合の是正または処罰措置は、省、自治区、直轄市人民代表大会またはその常務委員会が規定する。

第九章 附則

第七十四条 第二条第二項にいう天然草原は、草地、草山と草丘を含む。人工草地は改良された草地と、退耕還草地を含み、都市部の草地は含まない。

第七十五条 この法律は2003年3月1日より施行する。

 
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[1] 日本の裁判所に相当する。――訳注

[2] 中国語は「防沙治沙」。砂漠化防止と砂による被害抑制のための整備・対処を指す。以下、訳文では「防砂治砂」とする――訳注

[3] 亜熱帯山地の土壌喪失、基盤岩の露出或いは砂利(じゃり=砕石)の堆積などの現象を指す――訳注

[4] 斜度25度以上の傾斜地における耕地を草原に戻す事業。以下訳文では「退耕還草」とする――訳注